絵本

絵画をみるように絵本を眺める不思議な感覚。酒井駒子が描く絵本『まばたき』

あなたは絵画をみていて、時間を忘れてしまったことがありますか?

『まばたき』は、まるで絵画をみているような不思議な感覚になる絵本でした。自分が空気になり、なにも考えずにそこにいて、ただ眺めているだけ・・。

しばらくして、絵をただ眺めていたことに気づきました。

にほんブログ村 ライフスタイルブログ シンプルライフへ にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ にほんブログ村 雑貨ブログ 雑貨ライフへ

まばたき あらすじ


ちょうちょが飛ぶ時、鳩時計が12時を告げる時、猫が動き出す時、角砂糖が紅茶に溶ける時。時が止まる瞬間を美しく描く。(文引用:岩崎書店

穂村 弘 作
酒井駒子 絵

 

 

絵本の形をした絵画作品

2014年に発表された絵本『まばたき』は、酒井駒子さんの独特の世界感で描かれます。文は・・・、ほとんどありません。なので、絵からすべてを感じ取ってください。

出演するのは、「ちょうちょ」「鳩時計」「ネコとねずみ」「ティーカップ」、そして最後に「少女と老婆」。同じ出演者で、微妙に変化しながら、それぞれ3枚の絵が続きます。

黒の下地に絵の具をのせる、酒井駒子さんの絵は、絵本というより絵画を見ているようです。絵画は1枚の作品ですが、絵本は複数の絵で作られた作品。ゆったりとした上品な世界感が、心地よく感じます。

酒井駒子が描く上品な少女たち

酒井駒子さんの作品に描かれる少女は、みな上品さが漂います。「MOE」2018年10月号で酒井駒子さんの特集が組まれ、アトリエの写真に女性が写っていました。もしかして酒井さん?

残念ながら、お顔は拝見できません。ですが、絵本の世界に描かれている少女のような、上品な方だろうなと想像を膨らませてしまいます。

穂村弘さんが構成した絵本

作者の穂村弘さんは、現代短歌を代表する歌人

絵本の場合、通常は「文」と書くのですが、この絵本には文はわずか・・、どころかほとんど白紙です。

左(もしくは右)ページが絵が描かれて、もう一方のページに文があるのですが、ど真ん中にほぼひとこと「しーん」とか「カチッ」とかが書かれているだけです。

絵本全体の構成を穂村さんが考えて、酒井さんが絵を担当したのでしょうか?

絵本を読む感覚ではなく、景色をポカーンと眺めているような、とても不思議な絵本に仕上がっています。特に最後のシーンは衝撃で、ポカーンと放心状態になってしまいました。

忙しい現代人に眺めてほしい絵本

絵本を見ている間、ほんとうに何も考えていませんでした。ただただ、絵を眺めながらページをめくっていました。

時間はゆったりと流れていきます。時間に追われた生活をまるで、忘れたかのように。

忙しい現代人は、身体を休ませているあいだも頭をつかっているようです。頭を働かせていると結局、疲れは取れません。ですが、この絵本を眺めていると、何も考えられません。

なにが起こっているのか、頭では理解できない。だから、ただ眺めているしかないのです。

ぼーっとした時間を持って、頭も身体も休めさせることができる珍しい絵本だと思います。

こどもではなく、忙しい現代人に読んでほしい絵本です!

ABOUT ME
たくたく
たくたく
ほっこりっち編集長です。 大阪泉州地区出身の50代。 IT関係の仕事をしていたが、絵本専門の出版社に転職したことから絵本と文章の魅力に目覚める。 3年勤めた出版社を退職後は個人ブログを運営し、外部メディアさんに寄稿する機会も増えてきました。