子どものころに昔話や民話を聞かせてもらったという人もいるのではないでしょうか?
わたしは近所のおばあさんによく話してもらっていました。
昔話や民話って、大人になってあらためて読んでみると「けっこう大胆な展開だよなぁ」と思うのです。とくに海外の話は文化がちがうせいか、とくに思います。
そのなかでも、中国の民話『王さまと九人のきょうだい』は「もはや人間ではないのでは・・」と思う超個性的な兄弟が王様を相手に大暴れする話です。
名前をつけてくれたのはいいけれど・・
子どもが欲しくてしかたがなかったおじいさんとおばあさんはある日、不思議な老人のおかげで九人もの子どもを授かることができました。
老人が九人のこどもたちの名前をつけてくれたのはいいのですが、名前がちょっと、いえ、かなり変わっていました
というのも老人がつけてくれた名前は、「ちからもち」、「くいしんぼう」、「はらいっぱい」、「ぶってくれ」、「ながすね」、「さむがりや」、「あつがりや」、「切ってくれ」、「みずくぐり」だったのです。
・・もはや名前というより単語かな?
名前をつけてもらった九人の兄弟は、おじいさんとおばあさんのもとですくすくと大きく成長していきました。

王様の「とびきり、すてきな、けいりゃく」
九人の兄弟たちが大きくなったころ、王様は国中に、ある難題を解決したものには褒美をあたえると伝えました。
そこで九人の兄弟は相談して、難題を見事解決して見せたのです。
・・めでたしめでたし
ではなかったのです
なぜか王様、困りごとを解決してもらったのに「そんなやついるわけない」と信用しません。
王様は九人の兄弟にまた、難題を持ち掛けてみることにします。
どうやら王様は、「そんなにすごいやつがいるなら王様の座を奪われてしまう」と思ったようです。
そこで「とびきり、すてきな、けいりゃく」を思いつくのですが・・
なんだか悪巧みっぽい計略の形容詞が「すてき」って、ちぐはぐでおかしくないですか?
「けいりゃく」とひらがなで書かれると、あんまり悪そうに見えないから不思議なものです。
『王さまと九人のきょうだい』は個性を大切にした話?
個性を大切にする風潮はまだ最近のようですね。昔は個性よりも団体行動がいかにできるかのほうが重要だったとか。
ですが、『王さまと九人のきょうだい』はどちらかというと、個性を重んじた話だと思うのです。
九人の兄弟が難題を解決していくカギは「個性」なのです。
兄弟は 自分たちの個性を活かしつつ、困難を楽しみながら乗り越えていきます
わたしは、ひとりでなんでもできてしまうスーパーマンにあこがれるのですが、『王さまと九人のきょうだい』を読むと自分の個性を活かすことに集中するのもカッコイイなぁ、なんて思うのです。
大人だからわかる「悪者」すぎない王様
軽快に話が進んでいくうえに、王様と九人の兄弟のやり取りはサッパリとしているので気分が明るくなる一冊です。
王様があらすじを読んで持ったイメージよりも「悪者」ではなかったから、サッパリしているのだとわたしは思っています。
大人だからこそ目にとまる、王様と九人兄弟の軽快なやり取りに注目して読んでみると楽しめますよ
